医師の体験談INTERVIEW

中国で感じたこと

私は普段は聖心美容クリニック横浜院に勤めながら、約3ヶ月に1度のペースで上海での診療にあたっています。

中国に行って感じることは、まず患者さまが結果に対して正直だということ。日本の患者さまと比べて、感情表現や喜怒哀楽がはっきりとしていて、ストレートです。ただ、最初は驚いたのですが、慣れてくるとむしろ正直な感情をぶつけてくれることを前向きに捉えるようになりました。「もっといい手術をしたい!」と感じるようになり、自分のスキルアップにもつながります。

また、日本の患者さまの方が、知識や情報を得てから来院される場合が多いですね。ホームページで私の過去の症例写真を見た上で、遠方から来られる方もいます。また、「こういう風になりたい」というイメージも、現実の範囲内で持っています。
逆に中国の患者さまは、主張が強く、なりたいイメージに限界がありません。事前に調べることもなく、女優さんの写真を持ってきて「こうしてください!」と(笑)。そういった状況なので、中国の場合はできる手術やそれによる効果などを、日本での診療の時によりさらに丁寧にひとつずつ説明していく必要があります。
ただ、「変わりたい」「きれいになりたい」という気持ちがダイレクトでストレートなので、美容外科医として気持ちがいいですし、そこで結果を出せば、また次につながっていきます。

あと、中国の患者さまは、日本より情に厚い印象もあります。だから、一度気に入っていただければ、その後もずっと私を選んでくれます。例えば私が上海にいくタイミングに合わせて、必ず北京から来てくださる方もいらっしゃいます。北京~上海は、東京~福岡の距離ですから、簡単に来られるわけではないはずです。
上海でカウンセリングをした後、私に手術をしてもらいたいということで、横浜まで来られる方もそれほど珍しくありません。信頼関係を築けば、それくらいファンになっていただけます。単純に医師として、うれしいことですよね。

もう一つ、日本式を選んでくる患者さまの多くは、若いころに日本で仕事をされていたり、学生時代に留学をされていたり、やはり日本に何かしらの縁がある方が多いんです。だから、日本語が通じる人も思ったより多いことには驚きました。また、高い学歴を有している方や、英語が堪能な方も多くて、一般的にイメージする“中国人”とは、少し違う印象を受けましたね。

日本との共通点と相違点

中国でも日本でも、美容医療において大切なことは基本的には変わりません。
まずはメリットとデメリットをしっかりと伝えること。そしてできること・できないことを正直に、丁寧に説明することです。先ほども言ったとおり、日本の患者さまは、ネットなどであらかじめ調べて「あの治療をしてほしい」という気持ちで来院されますが、中国ではそうではなく、「私はどうすればいい?」「お任せします」といった感じです。その時に「任せます」と言われたからといって、十分なコミュニケーション抜きに治療を行ってはいけません。必ず選択肢を提示し、その患者さまに合うのはどの方法なのか、さらに治療のシステムや経過などをきちんと伝えなければいけません。

昨今、中国の美容業界においてトラブルが増えているようですが、それはやはり前述した工程を軽んじていることが原因になっていることが多いと思います。売り上げを優先して安請合いをしたり、デメリットには言及せず、メリットばかりを伝えたり、できないことをできると言ったり……。トラブルの根本には、それがあるのではないでしょうか。

もちろん違う部分もあります。まず日本よりも規制が厳しく、例えば新しい薬剤を使いたいと思っても、国の認可がなかなかおりません。日本や他のアジア各国が当たり前のように使っている薬もなかなか使えなかったり、値段が高かったりします。
日本では様々な治療法を組み合わせながら総合的に治療を行うことがここ10~15年ほどで主流となっていて、例えば私の場合は切開系の手術が得意なのですが、それだけではダメというのが、今の日本のスタンダードな考え方となっています。スキンケアもやって、注射もやって、メンテナンスもやって……と、多角的なアプローチで全体を作りあげていくイメージですね。よって、切りたくないという患者さまに対しては、複数の注射を併用するなど、代替の方法があります。

ただ中国ではなかなかそうもいきません。もちろんクリニックの規模や導入されているマシンにもよりますが、患者さまのニーズに対して、日本とは比べ物にならないくらい切る以外の方法が限られていて、結局、最後はメスだけが頼りになります。よって、手術の腕に自信があるのであれば、合っていると思いますし、私はそれが美容外科医の本来の姿だと思います。
私も手術にはある程度の自信がありますので、自分の存在意義を強く感じますし、その観点だけで言うと、中国の方が自分の技術を発揮しやすいですね。

もちろん中国もこれから、もっと成熟していって、日本のように手術だけではなく、トータルコーディネートする方向へと進んでいくと思われます。そうすれば、もっと多角的なアプローチをとることができて、市場規模も大きくなっていくでしょう。
その変遷の途中段階にある今だからこそ、トラブルを起こしてしまったり、売り上げだけを重視して無茶な治療をしてしまったりしないことが大切です。

中国の美容医療事情

とにかくエネルギッシュですね。10年ほど前の日本と近いのかもしれません。
ただ、一部の出稼ぎにきた韓国のドクターが、めちゃめちゃな治療をして社会問題にもなりました。そういった背景もあって、日本のドクターは真面目で真摯、診療も丁寧で、技術的にも優れているというイメージが、すでに浸透しています。
今後、日本から中国へと進出するドクターは、そのことを忘れてはいけません。売り上げだけでなく、より一層の信頼を得られるように、愚直にやっていく覚悟が必要です。お金のためだけに中国に渡り、韓国のドクターが起こしたような問題を繰り返してはいけません。

仕事以外の時間

診療が終わったら、現地のドクターやスタッフと一緒にご飯を食べにいくことが多いですね。すごくいいストレス解消になります。もちろん中華料理ばかりではありません。僕は大好きな焼き鳥や串かつをよく食べます。上海にはなんでもありますから。

仕事を離れた時に、ストレスや住みにくさを感じることはありませんね。ホテルもすごくいいところで、通勤も近い。また日本の通常業務とは違う環境で仕事ができるため、リフレッシュにもなります。
特に私の場合は、日本での診療時はほとんどのスタッフが女性のため、中国で男性のドクターやスタッフと会話ができることも有意義で、情報交換もできます。中国の人は正直なので、なんでもズバッと言ってくれるのも気持ちがいいですね。

メッセージ

実際に中国で診療をするとなった時、確かに不安もありましたし、いまだに驚きやカルチャーショックを受けることもあります。しかし今となっては、現地での生活、診療、治療スタイル、患者さま……それらから知ることすべてが、自分にプラスになっていると思います。

中国の美容医療は、まだ始まったばかりの段階で、すごく盛り上がっているし、大きな可能性も感じます。市場規模もすごく大きくて、そこに関われることは、非常に大きなチャンスだと思いますね。今、中国の美容医療に関わることが、将来的にどういったプラスになるのか、想像もつかないほどですし、医師として自分の人生の成功のヒントがどこかに隠れているかもしれません。

特に今、日本の美容業界は飽和し始めていて、その中で頑張ることだけが医師として正しいのかどうかが分からなくなっています。そう考えると、中国というフィールドはすごく魅力的ですよね。ここにあるすべてのことが、日本では決して得られない経験ですし、新しい人脈もできます。また、やろうと思っても、自分の力だけでは、なかなかできることではありません。
特に中国では手術がメインのため、そこに重きを置いているドクターや、新しい刺激を受けたいドクターには向いていると思いますよ。

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